水島新司さんへ

水島さんのドカベンに出会ったのは、僕が中学生の時でした。

友人とドカベンの面白さに取り憑かれました。

自転車で何軒ものブックオフを駆け回って「ドカベン」と「大甲子園」をかき集めたことを覚えています。

今でも友人と会えばドカベンの話題で盛り上がることがあります。

小さな巨人

ドカベンに登場するキャラクターは敵チームも含めてカラーが豊富で、特徴的です。

数多くいるキャラクターたちのように何か特殊能力がある訳でもなく、体の小さい彼が主人公山田太郎の所属する明訓高校のエース。

小さな巨人、里中智

中学生の僕は「小さな巨人」という言葉に衝撃を受けました。

言葉の矛盾にある彼を表すに相応しい表現。

体のサイズが大きさを決める訳じゃない。

体のサイズと野球の上手さは関係ない。

体が小さい僕にとって里中智は希望でした。

小さくても

「小さな巨人」が僕の野球のアイデンティティとなりました。

小さくても生きる道がある。

長打が打てなくても足を活かしたプレイでチームに貢献する。

学生時代からそれしかないと思って疑いませんでした。

現実

現実は甘くなかったです。

体が大きくて長打も打てて足も速い選手がいます。

誰にも負けない足になろうと思いました。

それでも、評価をされる時はいつもサイズからでした。

アメリカ

アメリカではサイズよりも先にスキルを見てもらえました。

足の速さを高く評価してもらうことができました。

体の大きな選手たちの中で足を活かしていましたが、サイズを言われなくなって解放されたのかもしれません。

小さくても大きいのが打ちたい。

自分の生きる道と挑戦もせずに、無理と決め込んでいたことに気づきました。

体を鍛えて大きくし、バッティングを研究し直しました。

130m

朝起きたらすぐにストレッチ。

ジムでトレーニング。

チーム練習。

お昼寝。

自主練。

1日6回の食事。

こんな生活を毎日のように続けていました。

ある試合で先頭打者初球を打った打球が130m飛びました。

僕の野球人生で1番飛んだホームランです。

小さくても飛ばせる。

「小さな巨人」に近づけた気がしました。

故障

体に限界が来ました。

小さい車体に大きなエンジン積もうとしすぎて、壊れてしまいました。

椎間板ヘルニアです。

小さな巨人とは

小さな巨人とは、生まれ持って決まっている、努力でどうにもならないものを言い訳にしない人のことを指すと思います。

なので、小さな巨人じゃなくてもなんでもいいんです。

「不細工なジャニーズ」でも。

今では当たり前の「黒人の野球選手」だって、昔はあり得ないことでした。

素晴らしい音色を奏でる辻井伸行さんも「盲目のピアニスト」です。

「〇〇だから無理」は終わりを意味します。

言ってはいけないし、あなたに言ってくる人がいたら離れることをお勧めします。

見た目や生まれ持ったもので評価をする人がいます。

その評価はあなたに何の意味も与えない。

他人の評価のために生まれてきた訳ではない。

自分で自分をちゃんと評価する。

自分に素直になる。

ハスキーの子たちには、そうあってほしいと心から思います。

最後に

水島新司さん。

数多くのキャラクターの中から小さな選手をエースにしてくれてありがとうございました。

小さな野球少年の希望となりました。

個性の大切さも教えてもらいました。

まだまだ個性を潰す指導が多いのが野球界です。

子供たちが個性むき出しで、はしゃいで楽しめる野球を広めていきたいです。

小さな巨人のおかげで野球を通じて自分を貫いて挑戦するという経験ができました。

本当にありがとうございました。

R.I.P.

この記事を書いた人

【代表】船田拓哉