・史上最年少20歳5ヵ月での完全試合達成
・プロ野球新記録の13者連続奪三振
・歴代最多タイの1試合19奪三振
・歴代2位の34イニング連続奪三振
これだけの偉業を1日で達成した佐々木投手ですが、注目すべき点はこの偉業をわずか105球で達成したことだと考えています。
打者27人に対して105球で全てアウトにしているわけですから、1人あたり約3.9しか投じていません。
それでいて三振数が19もあります。
無駄なボール球がいかに少ないか。そして、佐々木投手のボールをファールにすら出来なかったことが伺えます。
高卒ルーキー捕手
この偉業を達成した試合でマスクを被っていたのは高校を卒業したばかりの松川選手であるということも注目ポイントの1つです。
今までの野球界での常識はキャッチャーは多く経験を積まないといけない。ベテランならではの配球など言われることが多くありました。
ディフェンス面が重視されていた捕手評価から、打者として打てる捕手への評価へと少しずつ変化しつつあります。
捕手の評価基準
捕手を評価する上で前述した通り、ディフェンス面を評価することが当然で8番キャッチャー9番ピッチャーというチームがほとんどでした。
日本のディフェンス面での捕手を評価する方法は現在でも、とても曖昧だと考えています。
アメリカでは「フレーミング」「ブロッキング」「フィールディング」「盗塁阻止率」と評価基準が明確です。
フレーミングとは際どいボール球を捕手の捕球の仕方でストライク判定にする技術のことです。
シーズン通して何球ボール球をストライクと判定させたか数字が出され捕手の評価基準になります。
ブロッキングはワンバウンドのボールをパスボールにせずに止めること。
フィールディングはバント処理等のフィールド内でのボールの処理。
盗塁阻止率は捕手の盗塁を阻止する確率になります。
このように明確に捕手のディフェンス面評価基準というものがあります。
日本における捕手の評価として、いつも第一に挙げられるのがリードです。
あの捕手はリードがいいから。
この”リード”の評価の仕方は非常に難しく思います。
なぜなら、結果論に過ぎないからです。
打たれたらリードが悪い。打たれなかったらリードがいいとなります。
リードの評価
プロのデータが見つからなかったので早稲田大学が出した、データを元に考えていきます。
2010年東京六大学野球春季、及び秋季リーグ戦における早稲田大学の計23試合。 投手が投じた球が捕手の要求通りの投球確率は45%
そして、要求通りの球と要求通りではなかった球の被打率を比較すると、要求通りではない球の被打率は要求通りの球の2倍ということがわかりました。
これを見ると打たれたのは投手に責任割合が高いと考えられます。
そもそも要求しても45%しか要求通りに来ないので、如何にリードの評価というのが難しいかがわかると思います。
捕手が気をつけなければいけないことはリスクヘッジだということがわかります。
半分以上は要求通りに来ないわけですから、要求通りに来ないものだと考えてリスクの少ない選択をとり続けることが捕手の最善の策の練り方と言えるでしょう。
もし捕手のリードを評価する場合。リスクヘッジが大きな評価基準になります。
ですが、それを数字で表すことはとても難しいです。
とりあえず外に1球
2ストライクからとりあえず、外に1球外して様子を見る。
この配球の基本は段々と薄れて来たとはいえ、未だ根強く信仰されています。
勝負を急いで打たれた。軽率なリードという印象を与えたくないがために、わざわざボール球を献上する。
ちゃんと考えてリードをしていますというアピールにしか思えません。
少しでもカウント有利での勝負の方がピッチャーにとっても有難いはずです。
球数105球19奪三振
冒頭で述べたように、先日の佐々木投手の19奪三振完全試合は打者1人に対して平均3.9球しか投じていません。
「とりあえず1球外し配球」をしていたらこの球数は不可能だったでしょう。
肩は消耗品、球数の重要性を深く理解しているチームにすごい才能が入団したことを本当によかったと思います。
そして、高卒ルーキーが完全試合がかかった試合で恐れることなく外のボール球に逃げずに勝負を仕掛けたことは簡単にできることではないと思います。
例えば完全試合が決まった最後のバッターに対して、3球連続フォークで3球三振の場面。
2ストライクに追い込んでから3球目もフォークで勝負で、もし打たれていたら、、、
「何で1球様子を見なかった?」「勝負を急ぎすぎた」「1球外してからフォークを投げてれば三振だった」
そう言われるのが容易に想像できます。
結局、結果論。
その中でも僕は19奪三振完全試合を105球で達成したリードに新しい野球の可能性を感じました。